公正証書遺言があるのに、異議を唱える相続人がいるのはなぜ?

〜「争族」を防ぐために知っておきたいこと〜

「公正証書遺言があれば、もう安心ですよね?」

そう思っていませんか?

実は──
公正証書遺言があっても、相続人が異議を唱えるケースは少なくありません。

本記事では、その理由と背景、そして防ぐために大切なポイントを、できるだけわかりやすく解説します。


● そもそも「公正証書遺言」とは?

公正証書遺言は、
遺言者が口頭で内容を伝え、それを公証人が法的に記録・証明する形式の遺言です。
証人2名の立ち会いも必要で、最も信頼性の高い遺言形式とされています。


【民法第969条】
公正証書遺言は、公証人が作成し、遺言者と証人2人の前でその内容を確認し、署名押印を行うことで成立する。

にもかかわらず、相続の現場では「不満の声」や「法的異議」が起きることがあります。


● なぜ、異議が出るのか?

① 取り分が少ない/不公平に感じる

「兄は家もお金も全部もらっているのに、私には数万円だけ…」

「一人だけ優遇されていて納得がいかない」

このように、感情的な不満から異議を唱えるケースが非常に多く見られます。


② 法定相続分を大きく下回る → 遺留分侵害の可能性

公正証書遺言で「特定の人に全財産を相続させる」と書かれていた場合、
他の相続人は遺留分侵害額請求をすることができます。


【民法第1042条】
相続人は、自己の遺留分を侵害する贈与・遺贈に対して、金銭による支払いを請求できる。


この「遺留分」は法定相続人の最低限の取り分として法律で保証されています。
そのため、仮に公正証書遺言であっても、遺留分を侵害すれば異議が通る可能性があるのです。


③ 「遺言能力」が疑われる場合

・遺言作成時、すでに認知症を発症していたのでは?
・身内が無理に作らせたのでは?
・内容が本人らしくない──

こうした場合、
「遺言能力がなかった」として、遺言無効確認訴訟を提起されることもあります。


【民法第1020条】
遺言は、意思能力を有する者がしなければ、無効とする。


ただし、公正証書遺言は公証人・証人の立ち会いのもと作成されるため、
この無効を主張しても、裁判で認められるハードルは極めて高いとされています。


● よくある実例

  • 長男にすべて相続させると書かれていたが、長女が遺留分を請求

  • 認知症が疑われる高齢者が作成していたため、次男が無効を主張

  • 介護していた長女が付き添って作成したことで、他の兄弟が「誘導したのでは」と疑う


● 「争族」を防ぐために、どうすればいい?

  1. 不公平感を減らす内容の遺言書にすること
     → 介護や支援の有無、事情を明記すると納得感が生まれやすくなります。

  2. 遺留分に配慮した遺言内容にすること
     → 遺留分を侵害しない、または侵害分を金銭で補う文言を記載。

  3. 家族に前もって“想い”を伝えておくこと
     → 遺言内容に驚かせない工夫も、トラブル防止につながります。

  4. 公正証書遺言作成時に記録・立ち会いを強化すること
     → 遺言能力や意思確認の証拠にもなります。


● 行政書士としてできる支援

行政書士は訴訟代理はできませんが、
以下のようなサポートが可能です。

  • 遺言文案の作成サポート(法的要件・納得感のバランス)

  • 遺留分に配慮した構成のアドバイス

  • 公正証書遺言作成時の立会い・証人引受

  • 遺言者の意思確認記録(インタビュー記録・署名など)


● まとめ

異議の理由 法的に通る可能性
取り分が少ない(感情的) ✕ 原則通らない
遺留分の侵害 ○ 遺留分請求は可
遺言能力に疑問あり △ 無効訴訟で争えるが困難

◆ まずはご相談から◆

「内容に納得してもらえる遺言にしたい」
「将来、兄弟間で揉めてほしくない」
「うちの場合、遺留分はどうなる?」

そんな疑問があれば、お気軽にご相談ください。