遺留分制度とは?大切な人を守るための“最低限の取り分”制度

遺留分という言葉をご存知でしょうか?

遺言書で
「すべての財産を愛人に相続させる」
と書かれていた場合、他の家族は何も受け取れないのでしょうか?

このような極端なことを防ぐために、日本の法律には「遺留分(いりゅうぶん)」という制度があります。

この記事では、
・遺留分制度とは何か
・なぜ存在するのか
・誰がどれくらいの割合を持っているのか
・そして実際にどうやって請求するのか
について、カンタンに詳しく解説していきます。


遺留分とは?

遺留分とは、相続人(残された人たち)に法律上保証された“最低限の取り分”のことです。

被相続人(亡くなった方)が遺言書を残していたとしても、相続人が一定の範囲で財産をもらえるように保護するための制度
です。

たとえ「全部を第三者に遺贈する」と書いてあっても、遺留分を侵害していれば、その一部を取り戻すことができます。


遺留分制度がある理由

もし遺留分制度がなければ、
「愛人にすべてを相続させる」
といった遺言が有効になってしまい、残された家族が生活に困ることになります。

日本では、家族(特に配偶者や子)を最低限保護するという思想があるため、
「被相続人(亡くなった人)の意思」

「相続人(残された人)の生活の安定」
のバランスを取る制度
として遺留分制度が存在しているのです。


遺留分を持っているのは誰?

遺留分は法定相続人のうち、一定の範囲の人だけが持つ権利です。

相続人の種類 遺留分があるか?
配偶者 〇 あり
子ども(実子・養子) 〇 あり
直系尊属(父母など) 〇 あり(子がいない場合のみ)
兄弟姉妹 ❌ なし

つまり、兄弟姉妹には遺留分はありません。
子や親、配偶者など、生活の保障が必要とされる近親者が対象
です。


遺留分の割合はどれくらい?

遺留分は「法定相続分」に一定割合を掛けて算出されます。

相続人の構成 遺留分の割合(全体に対して)
子・配偶者がいる場合 法定相続分の1/2
直系尊属(親)のみ 法定相続分の1/3

【例】 例えば、被相続人(亡くなった人)に妻と子が1人いる場合

・遺留分:妻1/4、子1/4

が保証されるため、もし遺言書に
「愛人に全て遺贈する」
とあっても、最低限遺留分:妻1/4、子1/4を愛人に請求することができるのです。


具体的な例

① 法定相続分と遺留分の関係

  • 被相続人(亡くなった方):全財産5,000万円と仮定

  • 法定相続人:妻と子1人 → 法定相続分は各1/2(2,500万円ずつ)

  • 遺留分は、法定相続分の1/2
     → 妻:2,500万円 × 1/2 = 1,250万円
     → 子:2,500万円 × 1/2 = 1,250万円

つまり、妻と子はそれぞれ1,250万円分の遺留分を愛人に主張できる権利を持ちます。


② 仮に遺言で「愛人に全財産を渡す」と書かれていた場合

遺留分制度がなければ
・愛人に5,000万円すべてが遺贈される
・妻・子には一切財産が届かない
ということになり、あまりにも不条理です。

そして現実にはこれは妻・子の遺留分を侵害している状態となります。


③ ではどうするか?=「遺留分侵害額請求」が可能

  • 妻と子は愛人に対して、それぞれ1,250万円ずつ金銭を請求することができます
    (民法第1046条:遺留分侵害額請求権)

  • 2019年の改正により、以前のように「土地を一部返せ」というような請求ではなく、
     金銭で補償してもらうことが原則になっています


実際の請求方法(遺留分侵害額請求)

2019年の民法改正により、「遺留分減殺請求」から「遺留分侵害額請求」へと制度が変更されました。

▪ ポイント

  • 現物の返還ではなく“金銭請求”が原則となった
  • 遺贈や贈与を受けた人に対して、金銭で補償を求めることができる
  • 裁判所を通さずに、内容証明郵便などで請求を始めることが多い

▪ 請求できる期間

  • 相続開始と侵害を知ってから1年以内
  • または、相続開始から10年以内(※原則)

⚠ 注意点と実務のポイント

  • 請求をすれば必ず支払ってもらえるとは限らず、話し合い・調停・訴訟に発展することもある
  • 不動産しかない場合は、現金での支払いが難航することも多い
  • 実務では、生前贈与や生命保険などが遺留分の対象に含まれるかどうかが問題になることがある

まとめ:遺言を書いても「万能」ではない

遺言書は「本人の意思を反映する大切な手段」ですが、遺留分制度という“最低限の保障”を無視して完全に自由に分配できるわけではありません。

相続トラブルを避けるには、

・遺留分に配慮した遺言内容にする
執行者を指定し、実務的な執行を想定する
※遺言執行者についてはこの記事を参照
・家族への事前の説明・共有をしておく といった準備

が欠かせません。


どうでしょうか?

最初は
「遺留分なんてあったら遺言の意味がない!」
と思った方も、この制度がある理由を少しお分かりいただけたのではないでしょうか?

これからも遺言に関する様々な疑問点を解消する記事をご紹介していきます。

もし「この制度は何?」というようなご質問がありましたら、お気軽にメールでお問合せください。


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