はじめに
相続手続きで多くの方が戸惑うのが、「戸籍謄本を集める作業」です。
市役所で「出生から死亡までの戸籍が必要です」と言われて初めて、複数の戸籍を取り寄せる必要があることを知る方も多いのではないでしょうか。
この記事では、
「なぜ戸籍が複数必要なのか?本籍地が変わるとはどういうことか?」
という点について、行政手続きの実務に基づいて解説します。
相続手続きに必要な戸籍とは?
被相続人の相続手続きを行うには、主に以下の戸籍が求められます。
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出生から死亡までの戸籍謄本一式
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除籍謄本・改製原戸籍などの旧戸籍
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相続人の戸籍謄本
これらは、相続人が誰かを証明する「家族関係の証拠」として用いられます。
本籍地と戸籍は違う?どうして複数になるの?
戸籍は「本籍地」で管理されており、本籍地が変わるたびに戸籍も移転(=転籍)されます。
たとえば、以下のようなライフイベントで本籍地は変更されることがあります。
ライフイベント | 戸籍の変化 |
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結婚・離婚 | 配偶者と新しい戸籍を作成/旧戸籍から除籍される |
転籍届の提出 | 本籍を自分の意思で変更可能(居住地とは別) |
養子縁組・離縁 | 新しい戸籍に入籍または削除される |
戸籍法の改正 | 古い戸籍が廃止され、新しい様式の戸籍に切替(改製原戸籍が発生) |
このため、一人の被相続人に対して3〜4か所以上の戸籍が存在することも珍しくありません。
実際に起こる戸籍の分散例
事例1:転籍による戸籍の複数化
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20歳:出生地の神奈川県横浜市に本籍がある
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30歳:結婚し東京都中野区に本籍を移す
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50歳:家を建てた奈良県生駒市に本籍を再度変更
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75歳:生駒市にて死亡
この場合、横浜・中野・生駒の3か所に戸籍がある可能性があり、すべて収集しなければ「出生から死亡まで」がそろいません。
改製原戸籍とは?取得に注意が必要な理由
改製原戸籍とは、戸籍制度の改正により廃止された「旧様式の戸籍」です。
現在主に使用されている「コンピュータ化された戸籍(平成改製)」以前に記載されていた内容が含まれています。
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昭和から平成への改製(電算化)
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戦後の民法改正による変更
これにより、1つの市区町村内でも、戸籍が分かれて複数通取得が必要になる場合があります。
書類請求時の注意点
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「出生から死亡まで」と必ず伝える
→ 途中の戸籍が抜けていると手続きできません -
転籍先が不明な場合は調査が必要
→ 役所では「前本籍地の記載」でたどることが可能(窓口では丁寧に対応してもらえることが多い) -
郵送請求には時間がかかる
→ 本籍地が遠方の場合は郵送対応になりますが、1自治体あたり1週間〜10日程度かかることもあります
よくある質問
Q. 本籍地は住民票の住所とは違うのですか?
はい、違います。
本籍地は戸籍を管理するための「法的な住所」であり、住んでいなくても自由に設定できます。
まとめ
相続手続きに必要な戸籍は、**「現在の戸籍だけでは足りない」**という点を、多くの方が見落としがちです。
被相続人の一生のうちに転籍や戸籍制度の変更があると、複数の戸籍謄本を揃える必要が生じます。
これらの書類を正確かつ効率的に収集するためには、専門家のサポートを受けることが望ましいケースも少なくありません。
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