日本と海外でどう違う?遺言の普及率と文化の違い

今回は、日本と欧米諸国を中心に、遺言の普及の仕方や文化的背景の違いについて解説します。


日本の遺言の現状と文化

▪ 遺言作成率

日本では、遺言書を作成している人の割合は高齢者でも10〜15%程度と非常に低いと言われています。

日本財団「遺言・遺贈に関する意識・実態把握調査」

病気になってから、または亡くなる直前に慌てて作るケースが多く、
「まだ元気だから必要ない」
と考える人が多いのが実情のようです。

また
「遺言は縁起が悪い」
「死を意識する行為」
として、心理的なハードルが高く、遺言を“先送り”にしがちな文化があります。

・制度の複雑さ

遺言書を書いておけば、全てその通りになるというわけではありません。

日本では遺留分制度(最低限の取り分)というものが厳格に保護されており、遺言による自由な財産処分には一定の制限があります。
遺留分制度についてはこちらで詳しく解説しています

 


欧米諸国の遺言事情(アメリカ・イギリス・フランスなど)

・遺言作成率

欧米では、60代以上の高齢者で50〜70%の人が遺言書を作成しているとされており、一般家庭でも遺言作成はごく当たり前の習慣になっているようです。

その理由として、
「遺言を書く=自分の意思を家族に明確に伝える行為」
と、遺言書を残すことを前向き・合理的なものとして捉える文化があるようです。

・作成のタイミング

・子どもが生まれたとき
・マイホームを購入したとき
・結婚・離婚のタイミング
など、人生の転機ごとに「エステートプラン(財産管理計画)」として整備する文化があります。

・制度の違い

イギリスやアメリカでは、相続人の取り分(遺留分)の保護が比較的弱いため、自分の意思を優先しやすい制度設計になっています。

つまり、日本の遺留分制度のように、「遺言書を作成しても全てかなうわけではない部分」が少ないということです。


日本と海外の比較まとめ

項目 日本 欧米(米・英・仏など)
遺言作成率 約10〜15% 50〜70%以上
作成のタイミング 高齢期・末期が中心 人生の転機ごとに作成
社会的イメージ 縁起が悪い・面倒 家族への責任・権利の行使
制度の自由度 遺留分保護が強い 自由度が高い(国による)

なぜこうした違いが生まれるのか?

要因 日本 欧米
死生観 死を語るのは不吉という風潮 死は避けられない現実として合理的に受容
教育・啓発 学校や家庭で語られにくい 早期から「ライフプラン」の一環として扱う
制度の簡便さ 手続きが煩雑、制度が難解 シンプルでアクセスしやすい制度設計
専門家の距離感 敷居が高く依頼しにくい 法律サービスが安価で日常的

結論:これからの日本に求められる遺言文化とは?

日本でも高齢化が進み、家族の形が多様化する中で、「争族」を防ぐ遺言の重要性は今後ますます高まります。

「自分には財産が少ないから関係ない」
ではなく、
「誰に・どのように・何を託したいか」
を言葉にしておくことが、家族への最後の思いやりとなります。

遺言書を作ることは「死の準備」ではなく、「家族との未来の対話」と言えるものなのです。


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